サイトアイコン 東京都中央区茅場町の税理士|高橋輝雄税務会計事務所

インボイス制度下の税務調査、どう変わった?―不備は柔軟対応も、不正には厳正対処

令和5年10月に導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)から約1年半が経過し、
実務における現場でも徐々にインボイスへの対応が浸透してきました。

今回は、令和6年7月に発行された『週刊税務通信』第3859号の国税庁担当者へのインタビュー記事をもとに、インボイス制度下における税務調査の現状と国税当局の今後の対応方針について、経営者や個人事業主の方々が知っておきたいポイントをわかりやすくご紹介します。

インボイス登録の進捗と現場の理解状況

国税庁によれば、令和7年3月末時点でインボイス発行事業者は約461万に達しており、特に新規開業者や新設法人による登録が目立っています。

また、インボイスに関する相談件数もピーク時の月7.5万件から、現在では1万件未満に減少しており、制度の基本的理解が進んでいると評価されています。

国税庁では、制度に関する個別の疑問に対応するため、「インボイスの取扱いに関するご質問(Q&A)」を随時更新し、事業者が迷わず対応できるよう支援体制を整えています。

顧問税理士がいる場合には随時処理を確認してもらい、顧問税理士がいらっしゃらない場合には税務署に電話をかければ無料で相談が可能です。→インボイスコールセンター(インボイス制度電話相談センター)

税務調査の基本方針に変化なし

インボイス制度導入後も、税務調査の基本スタンスに大きな変更はありません。

従来どおり、「不正計算が想定される納税者」を中心に、調査必要度の高いケースに対して重点的な調査が行われています。

つまり、「記載事項の不備を探すためだけの調査」は行われず、実務上の記載ミスについては、他の書類(納品書や契約書)との突合確認や、売手からの修正インボイス再交付など柔軟な対応が取られています。

このように過度にインボイス制度を不安視する必要はないとも言えますが、「備えあれば憂い無し」ですね!

実務上注意すべき誤った取扱い

一方で、以下のような誤った取扱いは依然として確認されており、注意が必要です。

これらのケースでは、税務調査で否認される可能性があります。

特に、カード明細書は形式的にインボイスの要件を満たさないため、購入時に発行される領収書(簡易インボイス等)の保存が不可欠です。

保存不要の特例にも注意を

すべての取引においてインボイス保存が必要というわけではありません。以下のような特例もあります。

ただし、これらの特例についても誤解や適用ミスが起こりやすいため、
適用条件を正確に理解しておくことが重要です。

不正還付への厳正な対応と今後の方針

令和7事務年度においても、国税庁は制度の定着を図りながら、以下のような不正行為には厳正に対処する方針を打ち出しています。

こうした不正行為は、制度全体の信頼性を損なうだけでなく、公平な納税環境を脅かすものです。

インボイス制度によって、通謀なしに架空仕入れを計上することが難しくなった点は、
一定の抑止効果があると期待されています。

以前からこうした不正取引は横行していただけに、インボイス制度の導入は事業者にとって悪いことだけではなく、正直者がバカを見ない社会のためにもあってよい制度だとも言えますね。

まとめ:実務と制度のバランスを取りながら

インボイス制度の導入により、税務調査が急激に厳しくなったという印象を持つ方もいるかもしれません。

しかし、実際には実務上のミスには柔軟な対応が取られており、不正や制度の悪用に対してのみ厳正な対処がなされていることが分かります。

制度の正しい理解と、記録保存の基本を守ることで、無用なトラブルは回避できます。税理士など専門家と連携し、実務に即した対応を進めていきましょう。

今後もこうした税務に関する情報を分かりやすくお届けいたします。

モバイルバージョンを終了