こんにちは。東京都中央区日本橋茅場町の税理士 高橋輝雄(@teruozeimu)です。
法務局で会社設立の手続きが完了しましたら、次に税金、社会保険、労働保険の手続きをしなければいけません。
最近では、オンライン申請や各役所のホームページでダウンロードできるところも増えてきましたので、役所に直接出向かなくてすみます。
この記事では、会社設立時にやらなければいけない「税金」「社会保険」「労働保険」の届出全てを1つ1つ解説していきます。
税務署へ届出
会社設立時にまず、必須となる税務署への届出です。
届出先は、会社の所在地を管轄する税務署です。
税務署への届出は「提出必須の届出」と「必要があれば提出する届出」があり、以下のものです。
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
法人設立届出書
【概要】会社設立したことを税務署へ知らせるもの
【提出期限】設立の日から2ヶ月以内
【添付】
平成31年4月以降は添付は「定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(定款等)の写し」のみになりました。
①定款等の写し
※株主名簿や設立時貸借対照表は添付の必要はありません。
青色申告の承認申請書
【概要】会社設立後に青色申告を行う場合必要
【提出期限】事業年度開始日の前日まで/設立初年度の法人については、設立日から3か月以内もしくは1期目終了のいずれか早い日の前日まで
【メリット】
①欠損金の繰越控除が受けられる(10年間赤字を翌期以降の黒字と相殺できる)
②欠損金の繰戻し還付(黒字が出た翌期に赤字だった場合に税金を戻してもらう事も可能)
③30万円未満までの経費計上可能(通常は10万円以上の備品だと減価償却や一括資産償却という方法でしか経費計上できませんが、青色申告をしていれば30万円未満までは経費計上できるようになります。)
④税額控除の使用が可能(税金を直接減らせる真の節税である「税額控除」。こちらは青色申告をしていないと使えないものも多いのです。)
【てるおポイント】
会社設立時する法人にとって、青色申告はデメリットがないぐらいのレベルで出すべきものになります。ぜひとも提出しておきましょう!
給与支払事務所等の開設届出書
【提出期限】設立後、従業員を雇用する事になってから1カ月以内
【てるおポイント】
従業員だけでなく、経営者への給与の支払いでも届出が必要です。
会社設立したらすぐに提出するようにしましょう。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
【提出期限】設立後、特例を受けようとする月の前月末まで
【てるおポイント】
会社設立時に給与の支払人数が10人未満であれば、出しておいた方がよいでしょう。
毎月源泉所得税を納付してもよいのですが、半年に一度の納付にすると、資金繰りに余裕が生まれる場合が多いです。設立後は資金繰りに余裕をもたせる為にも提出しておいた方がいいでしょう。もちろん、半年分の源泉所得税の支払いはありますので、お金は残しておきましょう。
棚卸資産の評価方法の届出書
【概要】棚卸資産(商品在庫)がある場合に資産の評価方法を選ぶ
【提出期限】新たに法人を設立した場合、設立第1期の確定申告の提出期限までに
【てるおポイント】
棚卸資産の評価方法にはいくつか種類があり、届出しない場合は「最終仕入原価法による原価法」という決められた方法で計算することになります。
しかし棚卸資産は、評価方法によって利益の額が変わってきますので、必要な場合は会社設立後すみやかに提出した方がよいでしょう。
減価償却資産の償却方法の届出書
【概要】減価償却資産(固定資産)を所有している場合に償却方法を選ぶ
【提出期限】新たに法人を設立した場合、設立第1期の確定申告の提出期限までに
【てるおポイント】
設立後届出しない場合、償却方法は「定率法」が自動的に適用されます。そのため、定率法で減価償却を行う会社や、もともと定額法しかできない建物・附属設備の場合には不要です。
設立後にあえて他の償却方法を選ぶ場合は必ず提出してください。
消費税課税事業者選択届出書
【提出期限】設立後、適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで
【てるおポイント】
会社設立時では原則、資本金1,000万円未満の会社は設立2年間は消費税が免除されます。(その後も売上高が1,000万円を超えない限りは免税です。)
ただし提出した場合、最低でも「2年間」は消費税の納税義務者を続けなくてはいけません。
消費税の新設法人に該当する旨の届出書
【概要】資本金1,000万円以上の会社設立したときに提出
【提出期限】設立後、速やかに
【てるおポイント】
資本金1,000万円以上となっていますので、1,000万円の会社も対象です。
なお会社設立時の法人設立届出書を提出する際、消費税の新設法人に該当する旨を記載した場合には、不要となります。
消費税簡易課税制度選択届出書
【概要】課税売上高が5,000万円以下の中小事業者の事務負担の軽減が目的
【提出期限】設立後、課税期間の開始の前日まで
【てるおポイント】
消費税の簡易課税制度を利用するには
①基準期間の課税売上高が5,000万円以下で
②簡易課税の届出を課税期間の開始の前日までに提出している場合
この簡易課税制度を利用することができます。
ただし原則、2年間は課税制度を変更することはできません。
※基準期間の課税売上高とは単純には2期前の売上高を指します。(第3期目なら第1期目の年間の売上高)
■各種届出書の申請書類はこちら
都税事務所へ届出
次に会社設立したことを都税事務所へ知らせる届出をします。
法人設立届出書
【概要】会社設立したことを都道府県へ知らせる
【提出期限】設立の日から15日以内
【添付】
①定款等の写し
②登記事項証明書(全部事項)
【てるおポイント】
会社設立時に必要な届出は、各自治体によって運用が違いますが、東京23区内に所在している会社であれば「都税事務所」へ法人設立届出書を提出するだけでよく、区役所へは必要はありません。他の自治体であれば、市町村にも会社設立したことの届出をします。
年金事務所で社会保険加入
次は会社設立時に必要な社会保険加入です。年金事務所で加入の届出を行います。
なお、ひとり会社のひとり社長であっても法人の場合は社会保険が強制加入となります。
届出先は、会社の所在地を管轄する年金事務所です。
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届
健康保険・厚生年金保険新規適用届
【提出期限】会社設立日から5日以内
【添付】
①法人登記簿謄本(登記事項証明書)
②法人番号指定通知書のコピー
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
【概要】厚生年金保険や健康保険への加入を必要とする人がいる場合に事業主が出す届出
【提出期限】設立後、加入義務の事実が発生してから5日以内
健康保険被扶養者(異動)届
【概要】従業員の家族等が健康保険の被扶養者の認定を受けるため
【提出期限】事実発生日から5日以内
労働基準監督署へ労働保険の加入
労働保険は、雇用保険と労災保険を合わせたものです。雇用保険はハローワーク。労災保険は労働基準監督署が窓口になります。
労災保険の加入の届出先は、会社の所在地を管轄する労働基準監督署です。
- 適用事業報告書
- 労働保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
- 就業規則届
- 時間外労働・休日労働に関する協定届
適用事業報告書
【概要】会社設立後、労働保険の適用対象となったことを労働基準監督署に知らせる
労働基準法の適用を受ける事業所となったとき(業種を問わず、労働者を使用するに至ったとき)に提出します。
【提出期限】設立後、遅滞なく
労働保険関係成立届
【概要】従業員(パート、アルバイトにも適用)を 1 人でも雇い入れた場合に必要
【提出期限】設立後、保険関係が成立した日の翌日から起算して 10 日以内
【添付】会社の登記簿謄本
労働保険概算保険料申告書
【概要】労働保険料の前払いに必要な概算の届出。労働保険料は、その年度に従業員に支払う見込みの賃金総額を記入し、その額を前払いする為。
【提出期限】設立後、保険関係が成立した日の翌日から起算して 50 日以内
就業規則届
【概要】常時10人以上の従業員を雇う場合に必要
【提出期限】設立後、遅滞なく
時間外労働・休日労働に関する協定届
【概要】従業員に時間外・休日労働させる場合にあらかじめ届出が必要。いわゆる36協定です。
【提出期限】設立後従業員に時間外・休日労働させる場合、事前に
ハローワークへ雇用保険の加入
会社設立時に必要な届出最後は雇用保険の加入です。労働基準監督署で労働保険の加入を行ったら、ハローワークへ雇用保険の加入をします。
雇用保険には加入条件があり、以下のどちらかを満たす従業員がいる場合、加入しなければいけません。
①雇用形態に関わらず31日以上の雇用見込
②1週間の労働時間が20時間以上
届出先は、会社の所在地を管轄するハローワークです。
- 雇用保険適用事業所設置届書
- 雇用保険被保険者資格取得届書
雇用保険適用事業所設置届書
【概要】設立後、会社が雇用保険の適用対象となったことをハローワークに知らせる
【提出期限】労働基準監督暑へ労働保険関係成立届を行った後、従業員を雇用した日の翌日から10日以内
雇用保険被保険者資格取得届書
【概要】雇用保険適用事業所設置届と同時に提出
【提出期限】労働基準監督暑へ労働保険関係成立届を行った後、対象者を雇用した月の翌月10日まで
まとめ
今回は、会社設立時にやらなければいけない「税金」「社会保険」「労働保険」の手続きについて解説してきました。
会社設立後は役所への届出以外にも、法人口座の開設や、会計ソフトの導入も必要です。
また、個人事業主が法人成りした場合には、会社設立後にに税務署へ個人事業の廃業手続きが必要ですし、青色申告していた場合には、青色申告を取りやめる手続きも必要になります。
以前、ご自身で会社設立までされた方とお話させて頂く機会があった時、青色申告をご存じなく、アドバイスさせていただいた時にはすでに設立日から3か月が過ぎてしまっていたため、青色申告の申請が出来なかった方がいらっしゃいました。。
会社設立時に必要な届出には提出期限がありますので、期限を意識して届出してくださいね。
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