銀行融資の借換えはいつすべき?返済額と現預金で判断する
「毎月の借入返済が重く、利益は出ているのに預金が増えない」――そんなとき、検討したい選択肢の一つが銀行融資の借換えです。
ただし、借換えで月々の返済額が減っても、総利息や保証料が増えることがあります。重要なのは、借換え後の会社の現預金がどう変わるかを確認することです。
こんにちは。東京都中央区・茅場町で、中小企業の税務・資金繰り・銀行融資を支援している高橋輝雄税務会計事務所です。
銀行融資の借換えは、すべての会社に有利な方法ではありません。返済期間、金利、保証料、返済原資、今後の設備投資などによって判断が変わります。
この記事では、銀行融資の借換えを検討するタイミング、借換えとリスケの違い、返済額の比較例、銀行へ相談する前に準備したい資料を、現預金最大化の視点で解説します。
借換えを考えたいのは、毎月の返済負担を軽くすることで資金繰りに余裕を作れ、なおかつ総コスト・将来の返済可能性まで説明できる場合です。
借換え前に「現在の借入一覧表」「12か月程度の資金繰り見通し」「借換え後の返済予定」を並べて比較しましょう。資金不足が迫っている場合は、借換えだけにこだわらず早めに金融機関へ相談することが大切です。
銀行融資の借換えとは?リスケ・追加融資との違い
借換えとは、新たな借入によって既存の借入を返済し、金利や返済期間などの条件を組み直すことです。複数の借入を一本化する場合もあります。
似た言葉に「リスケジュール(返済条件の変更)」「追加融資」がありますが、内容は異なります。
| 方法 | 内容 | 主な目的・注意点 |
|---|---|---|
| 借換え | 新しい融資で従来の借入を返済する | 金利・返済期間・借入本数を見直す。新規審査と費用の確認が必要 |
| リスケ(条件変更) | 既存融資の元金返済額や返済期限などを金融機関と調整する | 資金繰りが厳しい場合の負担緩和。今後の資金調達にも影響し得る |
| 追加融資 | 既存借入を残したまま新たに資金を借りる | 運転資金・設備資金を確保する。借入残高・将来返済は増える |
「返済が重いから、とりあえず追加融資を受ける」と考える前に、どの方法が会社の現預金と返済能力に合っているかを確認しましょう。
参考:J-Net21「借入金の返済負担が大きいです。返済条件の見直しや借換えで負担を和らげる方法」
銀行融資の借換えを検討したい5つのタイミング
毎月の元金返済が資金繰りを圧迫している
返済負担が大きく、納税や仕入代金の支払い後に預金が薄くなる場合。期間の見直しに意味があるか確認します。
複数の借入があり返済条件がばらばら
借入先・返済日・金利が分散しているとき。一本化できるか、借入条件ごとに比較します。
金利や保証条件を見直す余地がある
既存の融資条件と現在提示される条件を比較します。金利だけでなく保証料や手数料も重要です。
採用・設備投資に備え現預金を確保したい
今後の投資に先立ち、返済と運転資金のバランスを整えたい場合。投資計画も含めて検討します。
決算・月次の数字が整い、銀行に説明できる
直近の試算表や資金繰り表がそろっていると、借換えの必要性と返済原資を伝えやすくなります。
資金不足が目前に迫っている
借換え審査の結果を待つ間に支払いが滞るおそれがある場合は、リスケを含めた相談を急ぎましょう。
借換えは「返済ができなくなってから初めて考えるもの」とは限りません。まだ返済できているうちに選択肢を比較することが大切です。
【比較例】借換えで毎月の返済額はどれくらい減る?
例として、借入残高1,200万円、残り返済期間3年の融資を、同額・返済期間6年の融資へ借り換える場合を考えます。
比較を分かりやすくするため、元金均等返済・固定金利年2.0%・毎月返済という共通条件を置き、保証料・手数料・繰上返済費用は含めません。
| 比較項目 | 借換え前 | 借換え後(仮定) |
|---|---|---|
| 借入残高・新規借入額 | 1,200万円 | 1,200万円 |
| 残り返済期間 | 3年(36回) | 6年(72回) |
| 金利(仮定) | 年2.0% | 年2.0% |
| 毎月の元金返済額 | 約33.3万円 | 約16.7万円 |
| 年間の元金返済額 | 約400万円 | 約200万円 |
| 初月の利息 | 約2.0万円 | 約2.0万円 |
| 残期間中の利息総額(概算) | 約37万円 | 約73万円 |
毎月の元金返済額は約16.7万円、年間では約200万円減る計算になります。これは資金繰り上、大きな違いです。
一方、返済期間を長くした分、上記の仮定では残期間の利息総額が約36万円増えます。借換えに伴う保証料や事務手数料があれば、さらに差が出ます。
実例ではなく、計算条件をそろえた説明用の試算です。元金均等返済のため実際の「元金+利息」の支払額は月ごとに変動します。初月の合計返済額は借換え前約35.3万円、借換え後約18.7万円です。端数処理、実際の金利、保証料、手数料、既存借入の繰上返済条件により結果は変わります。借換えが承認されることや、6年の返済期間が認められることを意味しません。
ここで重要なのは、借入元金の返済は、原則として損益計算書の費用ではないという点です。利益が出ていても、元金返済によって預金は減ります。だからこそ、借換えは「節税」ではなく「資金繰り」の視点から評価します。
ただし、返済期間を延ばして浮いた現金を赤字の補填に使い続けるだけでは、根本的な改善になりません。収益改善や運転資金管理とセットで考えましょう。
銀行融資を借り換えるメリットとデメリット
メリット:毎月の返済負担や借入管理を見直せる
- 返済期間の見直しにより、毎月の元金返済額を抑えられる場合がある
- 金利などの条件次第では、支払利息を抑えられる場合がある
- 複数の借入を整理し、返済予定を管理しやすくできる場合がある
- 浮いた現預金を、納税・運転資金・将来の投資に備えられる可能性がある
デメリット:総支払額や金融機関との関係にも注意
- 返済期間が長くなると、金利が同じでも利息総額が増えやすい
- 信用保証料、事務手数料、繰上返済手数料などが発生することがある
- 既存の担保・経営者保証・保証協会の枠などに影響する場合がある
- 他行への借換えでは、既存の取引金融機関との今後の関係も考慮する必要がある
- 新たな審査が必要で、希望する期間・金利・融資額が認められるとは限らない
「毎月の返済額」「借換えに必要な初期費用」「返済終了までの総額」をセットで比較しましょう。
銀行へ借換え相談する前に準備したい資料と5つの手順
最初にそろえたい資料
- 直近2〜3期分の決算書・税務申告書
- 直近の月次試算表(できる限り最新のもの)
- 金融機関別の借入一覧表・返済予定表・融資契約の主な条件
- 今後12か月程度の資金繰り表
- 借換えを希望する理由、希望条件、返済原資の説明
- 必要に応じて事業計画書・改善計画書・受注見込み資料など
手順1:借入一覧表を作る
借入先、借入残高、毎月元金返済額、金利、残存期間、信用保証協会の保証の有無、担保・個人保証の条件を整理します。
手順2:資金繰り表で今後の現預金を予測する
借換え前の返済予定を反映し、納税や賞与、仕入・外注費、設備投資などを含めて、いつ資金が薄くなるかを把握します。
手順3:借換え・条件変更・追加融資を比較する
借換えだけが正解とは限りません。返済の遅延が生じる前に、現在の金融機関も含めて相談の選択肢を整理します。
手順4:金融機関に「なぜ借り換えるか」を説明する
毎月の返済額を軽くしたい理由に加え、その資金をどう使い、将来どのように返済していくかを数字で説明します。借入先の選定は借入条件・既存取引との関係も踏まえて判断します。
手順5:手数料を含めて最終比較する
借換えが実行できる見込みになった段階で、金利・返済期間・保証料・その他費用・担保保証条件を確認し、借換え前後の資金繰り表を再計算します。
金融機関に相談するタイミングを詳しく知りたい方は、銀行融資の相談はいつすべき?、面談の準備は銀行融資で社長が聞かれることも参考にしてください。
日本政策金融公庫・信用保証協会付き融資も借換えできる?
日本政策金融公庫の場合
日本政策金融公庫の借入については、すべての融資が自由に借換えできるわけではありません。利用中の融資制度、公庫の事業区分、資金使途、現在の返済状況などによって取扱いが異なります。
日本政策金融公庫の中小企業事業には、一定の要件を満たす事業者に既往融資の借換え等を行う「公庫融資借換特例制度」が案内されています。原則として新規融資の利用が必要とされる場合があり、対象外の借入もあります。審査により利用できないこともあります。
一方、国民生活事業の借入についても、同じ制度をそのまま利用できると考えず、現在の借入を担当する公庫支店へ、利用可能な制度や返済条件の相談をしてください。
公式情報:日本政策金融公庫「公庫融資借換特例制度」(中小企業事業)
信用保証協会付き融資の場合
信用保証協会付きの融資では、金融機関の審査に加え、保証制度の要件や保証協会の審査が関係します。
例えば、国が案内する「経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)」は、所定の経営改善・再生計画などに基づく支援制度で、既往の保証付き借入の借換えが対象になる場合があります。ただし、誰でも自由に利用できる制度ではなく、適用要件・受付期限・保証条件の確認が必要です。
公式情報:中小企業庁「新たな保証制度等の取扱い」(2026年3月2日)
借換えが難しい場合はどうする?
借換えを相談しても、業績・返済能力・保証枠・担保条件などの理由で希望どおりにならないことがあります。
その場合は、次のような整理が必要です。
- 借換えが難しい理由を確認し、収益・資金繰り見通しを修正する
- 現在の金融機関に、返済期間の変更や元金返済の一時的な軽減が可能か相談する
- 不要な支出、利益率、売掛金の回収条件など、本業の現金創出力を見直す
- 税金・社会保険料の納付も含め、支払いに無理が生じる前に関係先へ相談する
大切なのは、借換えができなかった場合にも資金繰りを立て直すための次の打ち手を持っておくことです。
銀行融資の借換えを税理士に相談するメリット
税理士に借換え相談をするメリットは、単に融資を紹介してもらうことではありません。
例えば、決算書・試算表から利益と資金繰りのズレを整理し、借入一覧表と資金繰り表をもとに「月々いくらなら無理なく返せるか」を考えることができます。
ただし、税理士ごとに融資支援の対応範囲は異なります。借換えの書類準備、金融機関との面談支援、経営改善計画の作成など、どこまで依頼できるかを事前に確認しましょう。
税理士に相談できる内容や料金の考え方は、税理士に融資相談はできる?融資に強い税理士の選び方と相談費用でも解説しています。
自社の借換え・返済負担を個別に整理したい方へ
高橋輝雄税務会計事務所では、決算書や借入状況、資金繰りを踏まえたご相談を承っています。
スポット相談:60分 33,000円(税込)。毎月の資金繰り・返済予定まで継続的に見直したい方には、経営財務顧問もご案内しています。
銀行融資の借換えに関するよくある質問
Q. 借換えをすると毎月の返済額は必ず減りますか?
いいえ。新たな返済期間・金利・返済方式などの条件によります。月額が減っても、利息や費用を含めた総負担が増えることがあります。
Q. 赤字や債務超過でも借換えできますか?
一律に不可能とはいえませんが、返済原資、改善計画、保証制度の要件などの確認が重要になります。状況によっては借換えより条件変更が適する場合もあります。
Q. 既存の銀行から別の銀行へ借り換えられますか?
新しい金融機関の審査や既存融資の契約条件を満たせば選択肢になり得ます。ただし、既存の銀行との取引関係、保証協会・担保・手数料を含めて判断しましょう。
Q. 借換えとリスケはどちらがよいですか?
業績、返済状況、資金繰りの緊急度、今後の借入計画によって異なります。借換えには新規審査が必要で、リスケにもその後の融資への影響などの注意点があります。
Q. 日本政策金融公庫の融資も銀行借入と一緒に一本化できますか?
当然にできるわけではありません。公庫の事業区分・既存融資の条件・利用できる制度により取扱いが異なるため、公庫と関係金融機関に個別確認が必要です。
Q. 借換えの相談はいつ始めればよいですか?
資金繰りが逼迫する前に、借入一覧表と将来の資金繰りを整理できた段階で相談することをおすすめします。支払遅延が懸念される場合は、借換え審査を待たず早急に金融機関へ相談しましょう。
まとめ:銀行融資の借換えは「現預金最大化」で判断する
銀行融資の借換えは、毎月の返済額を見直し、会社の現預金に余裕を作るための選択肢です。
ただし、借換えが有利かどうかは「返済額の減少」だけでは判断できません。返済終了までの利息、保証料などの費用、担保・保証条件、将来の資金繰りをまとめて確認することが大切です。
まずは借入一覧表を作り、借換え前後の返済額と資金繰り表を比較してみましょう。銀行融資を、単に借りるための手段ではなく、会社と社長の選択肢を守る財務戦略として考えることが現預金最大化につながります。
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戦略的財務診断:55,000円(税込/事前確認制)。支援内容・料金は各サービスページをご確認ください。金融機関の審査や借換えの実行を保証するものではありません。
※この記事は2026年10月時点で確認できる公的制度案内などを参考にした一般的な情報です。融資制度、金利、保証料、審査条件は変更されることがあります。個別の条件は金融機関・日本政策金融公庫・信用保証協会へご確認ください。













