「追加で融資を受けたいのですが、銀行にはどう相談すればよいでしょうか?」
中小企業の社長から、このようなご相談をいただくことがあります。
売上拡大のための運転資金、設備投資、人材採用、広告宣伝、納税資金、借換えなど、会社を経営していれば追加融資を検討する場面はあります。
ただし、追加融資は「お金が足りないので貸してください」と伝えるだけでは、銀行に前向きに検討してもらいにくいことがあります。
銀行が確認したいのは、主に次の3つです。
- 何に使うお金なのか
- いくら必要なのか
- どのように返済していくのか
この記事では、追加融資を受けたい会社が銀行に相談する前に確認すべきことを、税理士・融資コンサルタントの視点から解説します。
この記事の結論
追加融資を相談する前に、資金使途・必要金額・返済原資・既存借入・今後の資金繰りを整理しておくことが大切です。
銀行は「いくら借りたいか」だけでなく、借りた後に返せるか、社長が数字を説明できるかを見ています。
追加融資とは何か
追加融資とは、すでに銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などから借入がある会社が、さらに新たな借入を受けることです。
追加融資には、さまざまな目的があります。
- 売上拡大に伴う運転資金
- 設備投資のための資金
- 人材採用や外注費の先行支出
- 広告宣伝や新規事業への投資
- 納税資金
- 既存借入の借換え
- 資金繰りの安全余裕を確保するための資金
借入があること自体は悪いことではありません。
必要なタイミングで適切に資金調達を行い、手元資金を厚くしておくことは、会社を守るうえで大切です。
ただし、追加融資を受けるということは、将来の返済額も増えるということです。
そのため、追加融資を検討するときは、「借りられるか」だけでなく、「借りた後に返せるか」まで確認する必要があります。
銀行に相談する前に確認すべき5つのこと
追加融資を相談する前に、最低限、次の5つを確認しておきましょう。
1. 資金使途は明確か
最初に確認すべきなのは、資金使途です。
資金使途とは、借りたお金を何に使うのかということです。
銀行にとって、資金使途があいまいな融資は判断しにくくなります。
たとえば、次のような説明では不十分です。
- なんとなく資金繰りが不安なので借りたい
- 手元資金を増やしたいので借りたい
- 売上が伸びそうなので多めに借りたい
もちろん、手元資金を厚くすること自体は重要です。
しかし、銀行に説明する際には、もう少し具体的に整理する必要があります。
たとえば、次のように説明できると分かりやすくなります。
- 売上増加に伴い、仕入資金が先行して必要になる
- 新規採用により、売上化するまでの人件費を確保したい
- 設備投資により、受注対応力を高めたい
- 季節変動により、入金前の支払いが先行する
- 既存借入の返済負担を見直し、月次資金繰りを安定させたい
追加融資では、「なぜ今、その資金が必要なのか」を説明できることが大切です。
2. 必要金額の根拠はあるか
次に確認したいのは、必要金額の根拠です。
銀行に「いくら借りたいですか」と聞かれたときに、なんとなくの金額では説得力が弱くなります。
たとえば、1,000万円の追加融資を希望する場合には、なぜ1,000万円なのかを説明できる必要があります。
必要金額の根拠は、資金使途によって変わります。
- 仕入資金なら、売上計画や仕入見込み
- 設備投資なら、見積書や導入後の効果
- 人材採用なら、採用人数、給与、売上化までの期間
- 納税資金なら、納税予定額と支払い時期
- 借換えなら、既存借入の残高と毎月返済額
追加融資では、希望額そのものよりも、「その金額が必要である理由」を整理することが重要です。
3. 返済原資を説明できるか
返済原資とは、借りたお金を何によって返済していくのかということです。
銀行は、追加融資を検討するときに、会社が返済できるかを見ています。
そのため、社長は返済原資を説明できる状態にしておく必要があります。
返済原資としてよく見られるのは、将来の利益やキャッシュフローです。
たとえば、追加融資によって仕入を増やし、売上が増え、利益が増えるのであれば、その利益が返済原資になります。
設備投資であれば、投資によってどの程度売上や利益が増えるのか、またはコスト削減につながるのかを整理しておきたいところです。
返済原資を説明できないまま追加融資を相談すると、銀行からは「返済計画が弱い」と見られる可能性があります。
4. 既存借入の状況を把握しているか
追加融資を相談する前に、既存借入の状況も整理しておきましょう。
銀行は、現在の借入残高や毎月返済額を必ず確認します。
そのときに社長自身が借入状況を把握していないと、銀行との対話がスムーズに進みにくくなります。
最低限、次の項目は整理しておきたいところです。
- 金融機関名
- 借入残高
- 毎月返済額
- 金利
- 返済期限
- 保証協会付きか、プロパー融資か
- 経営者保証や担保の有無
借入が複数ある場合は、借入一覧表を作成しておくことをおすすめします。
借入一覧表については、こちらの記事で詳しく解説しています。
借入一覧表とは?銀行融資・資金繰りで社長が整理すべき借入情報
5. 今後の資金繰りを見通せているか
追加融資を受けると、手元資金は一時的に増えます。
しかし、その後は毎月返済が発生します。
そのため、追加融資を受けた後の資金繰りまで見通しておく必要があります。
資金繰り表を作ることで、次のようなことが分かります。
- いつ資金が不足しそうか
- いくら借りれば資金繰りが安定するか
- 追加融資後の返済額に無理がないか
- 納税や賞与など大きな支払いに対応できるか
- 設備投資や採用に使える余力があるか
銀行に相談する前に、今後6か月から12か月程度の資金繰りを確認しておくと、説明しやすくなります。
資金繰り表については、こちらの記事も参考になります。
資金繰り表の作り方と活用方法はこちら
追加融資で銀行が見ているポイント
追加融資では、銀行は新規融資以上に、会社の現在の状況とこれまでの返済実績を見ています。
主に確認されるのは、次のようなポイントです。
足元の業績
直近の売上、利益、現預金の状況は重要です。
決算書が黒字でも、直近の試算表で赤字が続いている場合、銀行は慎重に見ます。
逆に、決算後も月次で業績を把握し、足元の状況を説明できる会社は、銀行との対話がしやすくなります。
既存借入の返済状況
既存借入をきちんと返済しているかも見られます。
返済遅延がないことはもちろん、現在の返済額が会社のキャッシュフローに対して重すぎないかも重要です。
毎月の返済額が重い場合は、単に追加で借りるのではなく、借換えや返済条件の見直しを検討する必要があるかもしれません。
資金使途と返済原資の整合性
銀行は、資金使途と返済原資がつながっているかを見ます。
たとえば、売上拡大のための仕入資金であれば、売上増加によって返済できる見込みがあるか。
設備投資であれば、その投資によって収益性や生産性がどう改善するのか。
資金使途と返済原資のつながりが説明できると、銀行は検討しやすくなります。
社長が数字を把握しているか
銀行は、社長が自社の数字をどれだけ把握しているかも見ています。
借入残高、毎月返済額、資金繰り、今期の見通しを説明できる社長と、すべて税理士や経理担当者任せの社長では、印象が変わります。
完璧に細かい数字を暗記する必要はありません。
しかし、重要な数字については、社長自身が説明できる状態にしておきたいところです。
追加融資を相談するタイミング
追加融資は、資金が足りなくなってから慌てて相談するよりも、資金に余裕があるうちに準備する方が望ましいです。
銀行から見ると、すでに資金繰りがかなり苦しくなっている会社よりも、早めに計画を立てて相談している会社の方が検討しやすくなります。
次のようなタイミングでは、早めに資金繰りを確認しておきましょう。
- 売上が急に伸びている
- 大きな仕入や外注費が先行する
- 設備投資や採用を予定している
- 納税や賞与など大きな支払いが近い
- 既存借入の毎月返済額が重くなっている
- 現預金残高が減少傾向にある
融資相談のタイミングについては、こちらの記事でも解説しています。
銀行融資の相談はいつすべき?決算前・決算後のベストタイミング
銀行に相談する前に用意したい資料
追加融資の相談をする前に、次の資料を用意しておくとスムーズです。
- 直近2期分から3期分の決算書
- 直近の月次試算表
- 借入一覧表
- 資金繰り表
- 資金使途が分かる資料
- 設備投資の場合は見積書
- 今後の売上・利益の見通し
- 必要に応じて事業計画書
すべてを最初から完璧にそろえる必要はありません。
ただし、少なくとも「何に使うのか」「いくら必要なのか」「どう返すのか」を説明できる資料は準備しておきたいところです。
追加融資で避けたい相談の仕方
追加融資を相談するときには、避けたい伝え方もあります。
「とりあえず借りたい」と伝える
目的や金額の根拠がないまま「とりあえず借りたい」と伝えると、銀行は判断しにくくなります。
資金使途と必要金額を整理したうえで相談しましょう。
資金繰りが限界になってから相談する
現預金がほとんどなくなってから相談すると、選択肢が限られやすくなります。
資金繰りが厳しくなる前に、早めに相談することが大切です。
既存借入を把握しないまま相談する
既存借入の残高や毎月返済額を把握していないまま追加融資を相談すると、銀行からの信頼を得にくくなります。
借入一覧表で整理してから相談することをおすすめします。
試算表が古いまま相談する
追加融資では、足元の業績が重要です。
試算表が数か月前で止まっていると、現在の状況を説明しにくくなります。
少なくとも直近月までの試算表を整えておきたいところです。
まとめ
追加融資を受けたい会社は、銀行に相談する前に次の点を確認しておきましょう。
- 資金使途は明確か
- 必要金額の根拠はあるか
- 返済原資を説明できるか
- 既存借入の状況を把握しているか
- 今後の資金繰りを見通せているか
追加融資は、単に「借りたい」と伝えるだけではなく、銀行に説明できる状態を整えることが大切です。
決算書、試算表、借入一覧表、資金繰り表を整理し、資金使途と返済原資を説明できるようにしておきましょう。
銀行融資は、申し込む直前の交渉だけで決まるものではありません。
日頃から数字を整え、社長自身が自社の状況を説明できる会社にしておくことが、追加融資の相談でも重要になります。
追加融資を相談する前に、数字を整理したい方へ
追加融資を検討する際は、資金使途、必要金額、返済原資、既存借入、今後の資金繰りを整理しておくことが大切です。
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