中小企業の経営者さん、資金繰りや節税対策で「倒産防止共済」(経営セーフティ共済)に注目されたことはありませんか?
この共済制度は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐ保険的な役割を果たしながら、掛金を損金(経費)にできるという大きな節税メリットがあります。しかし、節税効果を得るには、決算時に法人税申告書の別表十(八)への正しい記入と提出が必要です。
現時点の別表の正式名称は「社会保険診療報酬に係る損金算入、農地所有適格法人の肉用牛の売却に係る所得の特別控除、特定の基金に対する負担金等の損金算入及び特定業績連動給与の損金算入に関する明細書」です。(長い!)
この記事では、倒産防止共済の制度概要から、別表の具体的な記載方法までをわかりやすく解説します。
目次
倒産防止共済とは
中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する共済制度です。
仕組みとメリット
対象:中小企業者で一定の条件を満たす法人・個人事業主
目的:取引先の倒産に備え、掛金に応じた貸付を迅速に受けられる
貸付限度額:掛金総額の10倍(最大8,000万円)
節税効果:掛金は全額損金(必要経費)として算入可能
掛金の取り扱い
月額5,000円〜20万円の範囲で設定可能(5,000円単位)
前納も可能で、利益が見込まれる年には節税対策として有効
掛金の上限は累計800万円
40ヶ月未満の解約では元本割れに注意
法人税別表十(八)の記入方法
倒産防止共済の掛金を損金として算入するためには、法人税申告書に添付する「別表十(八)」への記入が必要です。
対象となる様式
別表十(八)のうち、「III 特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」に記入します。
記入例
項目 | 記入内容 |
---|---|
基金に係る法人名 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構 |
基金の名称 | 記入不要 |
告示番号 | 記入不要 |
当期に支出した負担金等の額 | 実際に支出した掛金金額 |
同上のうち損金に算入した金額 | 実際に損金(経費)にした掛金金額 |
注意点
租税特別措置法第66条の11により、明細書の添付がない場合は損金算入が認められません。
申告時に必ず別表十(八)の添付を行うことが重要です。
また、制度改正により、2024年10月から「再加入から2年以内の掛金を損金に算入できない」こととなりました。
その点を踏まえ、本明細書へ記入する際、次のように区分して記載することが望まれます。
当期支出額:支出総額(再加入の掛金含む)
損金算入額:2年制限の影響がある分を除いた金額
たとえば、再加入してから1年半経過しており、掛金が240万円、うち120万円分は制限対象であれば、
「当期支出額 240万円/損金算入額 120万円」
とし、改正後の処理を明確にすることが重要です。
✅ 改正ポイントまとめ
項目 | 内容 |
---|---|
適用開始日 | 2024年10月1日以後の再加入時 |
限定期間 | 解約日から2年間、掛金を損金算入不可 |
対象 | 法人・個人共に同様 |
対策 | 撤回せずに40ヶ月継続/再加入は要注意 |
節税だけではない倒産防止共済の価値
倒産防止共済は単なる節税手段ではありません。いざという時に資金を確保できる「経営の安全網」としての役割も担っています。
例えば、主要取引先が突然倒産し、売掛金が回収できなくなった場合でも、共済から貸付を受けることで、急場をしのぐことが可能です。
まとめ
倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、
資金繰りのリスクヘッジ
節税対策
という二つの視点から、中小企業や個人事業主にとって非常に有用な制度です。
ただし、損金算入を確実に行うためには、法人税別表十(八)の正しい記入と添付が不可欠です。
迷った場合は税理士に相談することで、適切な節税とリスクマネジメントを実現しましょう。