「マイクロ法人を作ると節税できる」と耳にしても、気になるのがその後の維持費や必要経費です。
法人は設立をして終わりではなく、法人を維持するためには毎年必ずかかる固定費や会計ソフト代、場合によっては決算申告等での税理士費用も必要になります。
実際に相談を受けてみると、節税効果よりも維持コストが上回り「思ったよりお得じゃなかった…」というケースも少なくありません。
この記事では、税理士の立場からマイクロ法人の維持費の内訳・税理士費用の相場・年間コスト例を整理し、最後に「税理士と顧問契約を結ぶメリット」も解説します。
目次
マイクロ法人にかかる固定費(均等割・法定費用)
1. 法人住民税(均等割)
- 赤字でも必ず発生する「均等割」。
- 年間7万円(都道府県+市区町村合算)が基本。
- 東京都23区の場合は7万円/年。
- 収益規模が大きくなると加算される場合もあり。
2. 登記関連の費用
- 本店移転や役員変更などの登記事項変更 → 数千円〜数万円。
- 放置すると登記懈怠で過料(かりょう)が発生する可能性も。
3. その他法定費用
- 定款変更、公告掲載料など必要に応じて発生。
👉 「全く利益がなくても、たとえ赤字でも最低7万円+α」は確実にかかるのがマイクロ法人の特徴です。
会計ソフトや社会保険関連コスト
1. 会計ソフト代
- クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワードクラウドなど)。
- 年間1〜3万円程度。
- 経理を自分で行うなら必須。
2. 社会保険料
- 役員報酬を最低額(月5〜6万円)に設定しても、健康保険+厚生年金で年間約30〜40万円程度。
- 将来の年金額や扶養の扱いに影響するため要注意。
3. 労働保険・雇用保険(従業員を雇う場合)
- 人件費に比例して負担。
- 雇用予定がなければ不要。
👉 節税効果だけでなく、社会保険料を含めたトータルコストを必ず計算する必要があります。
税理士費用の目安(自計化 vs 税理士依頼)
自計化する場合
- 会計ソフトを使って自分で経理。
- 税務申告書はe-Taxで自作。
- 年間コスト:1〜3万円(ソフト代のみ)。
- デメリット:知識不足で申告ミス → 延滞税や追徴のリスク。
税理士に依頼する場合
- 決算申告+顧問契約込みが一般的。
- 報酬相場:
- 決算申告のみ:10〜20万円/年
- 顧問契約あり:月1〜2万円+決算料10〜20万円
- 年間コスト:20〜50万円程度。
👉 節税シミュレーションや社会保険の設計を相談したいなら、税理士依頼の価値は高いです。
実際の年間維持コスト例
マイクロ法人の「年間コスト」はどのくらいになるのか?ケース別にまとめます。
| ケース | 内訳 | 年間合計 |
|---|---|---|
| ケース1:自計化 | 均等割7万+会計ソフト2万+社保35万 | 約44万円 |
| ケース2:税理士に決算のみ依頼 | 均等割7万+会計ソフト2万+社保35万+税理士12万 | 約56万円 |
| ケース3:顧問契約あり | 均等割7万+会計ソフト2万+社保35万+顧問料24万+決算料12万 | 約80万円 |
👉 自計化と税理士依頼では30万円以上の差が出ることも。ただし税務調査リスクや設計の安心感を考えると「単なるコスト差」では測れません。
顧問契約を結ぶメリット
- 税務・社会保険のシミュレーションができる
節税効果が出る年収ライン、役員報酬の最適設定などを事前に相談可能。 - 申告・届出のミスを防げる
書類の不備や期限遅れによる追徴リスクを減らせる。 - 長期的なライフプランに合わせた設計
将来の年金、家族の社会保険、住宅ローン、投資計画まで考慮できる。 - 税務調査への安心感
税理士が顧問に入っていれば、調査対応の負担が大幅軽減。
👉 「節税目的でマイクロ法人を作ったけど、維持コストに振り回されている」という方ほど、税理士と顧問契約する事で設計の最適化を図る価値があると言えます。
まとめ
マイクロ法人の維持費は「均等割7万円」だけではありません。
会計ソフト代、社会保険料、税理士費用まで含めると、最低でも年間40万円前後、税理士依頼で50〜80万円程度かかるのが一般的です。
- 自計化すれば安いが、ミスや手間のリスクあり。
- 税理士に依頼すれば安心だが、コストは増える。
- 節税効果と維持コストのバランスが「マイクロ法人を作るべきか?」の判断基準になる。
👉 ご自身のケースを今回の記事に当てはめて見ても迷っており、「節税効果と維持費が釣り合うかどうか」を知りたいという方は、お問い合わせよりご相談ください。




















