税理士という職業がら確定申告や年末調整の時期になって作業していると思うのが
「寡婦控除って男女差別があるのでは?」
というところです。
法律というのは本来男女差別すべきではありません。むしろ今の時代は男女雇用機会均等法などにも代表されるように男女間で優劣を付けるべきではありません。
しかし、税金や社会保障制度においてはそういった部分がまだまだ今の時代に追いついていない事が多いのです。
若い方にはあまり関心がないかもしれませんが、ゆくゆくは自分のパートナーが亡くなって「寡婦(寡夫)控除」を使うこともあるでしょう。
本稿では所得税法における寡婦控除についてのお話です。
「寡婦」というのは普段生活していて馴染みがないですよね。
- 夫に死に別れて再婚しないでいる女性。やもめ。後家(ごけ)。未亡人。
- 夫と離婚し、そのまま再婚しないでいる女性。
出典:コトバンク
この夫の部分を妻に変えたのが寡夫です。
寡婦(寡夫)控除は一定の要件に該当する人が受けられる所得控除(所得税の計算前の金額からあらかじめ引けるもの)になります。
どのような人が寡婦(寡夫)控除を受けられる?
実際に寡婦(寡夫)控除を受けられるのどんな人かと言いますと、
旦那さんや奥さんが死別した人や離婚した人
が受けられる控除になります。
控除される金額としては
- 寡婦(寡夫)控除…27万円
- 特定の寡婦控除…35万円
以上のようになります。
お気づきでしょうか?特定(下の段)は”寡婦”しかないのは誤りではないです。
男性が使える寡夫控除には特定寡夫控除というものは存在しない
先ほど示したように寡婦(寡夫)控除には通常の寡夫控除と特定が付くものの2種類の控除額があります。
しかし、男性の場合は金額の大きい特定寡夫控除というものは存在しません。
あらかじめ法律を制定した時は「男性が働き奥さんは家を守る」という時代(今も家庭によってはそうでしょうが)ですから、今のように女性が男性と同じように経済力を持って働くというのは想定されていなかったのでしょう。
税法ないし法律というのはこういう時に今の時代に法が追い付いていないなと感じます。
控除金額だけでなくて、実は控除を受ける要件においても違いがあります。
- 女性の寡婦控除…特に子供がいなくても受けられる
- 男性の寡夫控除…生計を一にする(平たく言えば養っている)子供がいないと控除を受ける事ができない
なぜそのようになっているかと言えば、制定した時代には「妻を無くした夫を優遇する必要はどこにもない」という考えが時代背景にあったのかもしれませんね。
税法も時代に沿って変わる必要がある
私が思うのは何も「とにかく寡夫にも優しくしろ!」というわけではありません。
ただ、税法もしかりですが、行政の手当てにおいても男女で結構差があります。
同じような問題で言えば、シングルマザーが受けられるような助成金が、なぜかシングルファーザーだと受けられない。こういうのはおかしくないでしょうか?
男女雇用機会均等法が施行されて、女性の社会進出が叫ばれました。今や実力主義の会社も多く、出世に男女差がないことも多いのではないでしょうか?
であれば、一方で寡夫などの法律も同様に平等という観点から整備すべきかと。
もちろん出産というのは女性にしかできない一大イベントではありますし、男性がそれを代わる事が出来ないのも事実です。
しかし、不慮の事故などにより奥さんが亡くなってしまい、シングルファーザーになってしまった方のバックアップもされてしかるべきではないでしょうか?
男性だから経済力が女性よりも優れているので控除が受けられない世の中というのも、それこそ男女の平等という観点からは疑問を生じませんか?
最近、シングルファーザーが経済的に苦労しているニュースを拝見しましたので考えさせられたところです。