創業から頑張ってきた社長も勇退の時期になり退職金を出したい。
社長の貢献は当社にとって甚大なものだったからと青天井で支払おうとしてませんか?
その支払いは相当危険です。
過去にも税務署サイドと納税者サイドで多くの戦いが繰り広げられてきました。
一般的な慣例の支払い方はこんな感じです。
役員の最終月額報酬額×勤務期間×功績倍率=役員退職金額 |
功績倍率は多くは1.0~3.0の間と言われています。
どれだけ会社に貢献しているかにより変える事が多いのですが、私の実感としては3.0倍に設定している会社様が多い気がします。
税法上の注意点
さて、そんな役員退職金ですが、法人税法上注意しなければならない事があります。
・他社と比較して過大(多すぎ)ではないか?
・貢献具合から見て過大(多すぎ)ではないか?
条文的には法人税施行令第70条に過大な役員給与についての記載があります。
第七十条(過大な役員給与の額)
法人税法第三十四条第二項 (役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。2項
内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与の額が、当該役員のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額
先ほどの功績倍率はどれだけその役員が会社に貢献したかを数値化したものであります。
ですので、退職金を支払う役員が単に名義的な役員だった場合、功績倍率を3倍として支給したとしても、後の税務調査で否認される(税金計算上費用とされない)ことは必至かと思われます。
なお、否認された場合、通常支払う税金の他、延滞税や過少申告加算税が課されますので、できるだけ否認されない程度の役員退職金を設定するのが良いでしょう。
最近の事例から
平成28年4月22日に東京地方裁判所で役員退職金に関する裁決が出ました。
税務署の主張:支給した役員退職金は過大である。類似規模の会社の最終月額報酬額の「平均」または「最高」を採用して計算すべき
納税者の主張:類似規模の会社の「平均」も「最高」もおかしい。自社にはそんな事は関係ない
【東京地裁】
比較した法人の「最高額」を採用すべき
このように、見ますと、やはり退職金を出す場合には、自社だけを考えて報酬額を出すというのは危険であると言えます。
やはり、時間をかけてでも類似規模の会社の状況を調べて出す必要があるでしょう。
後から否認されたのでは、色々な面で後味の悪さが残りますので、どうかお気をつけ下さい。