東京都中央区を拠点に日々活動されている小規模法人の経営者・個人事業主の皆さまへ。
今回、ガソリン税および軽油引取税における「暫定税率」の廃止という重大な税制変更の合意が報じられました。(2025年10月31日)
プライベート利用ではなく事業用の車両をお持ちの方、物流・配送・営業車を使用している方は、影響が時間差ながら確実にやってきます!
今回は、その内容と「そもそも暫定税率とは何か」という基本から、押さえておくべきポイントを東京都中央区の税理士高橋輝雄が整理いたしました。
目次
暫定税率とは何か?
定義と背景
そもそもですが、“暫定税率”とは、名前の通り「暫定的(一定期間だけの)措置として設けられた税率」であり、当初はその期限が明確にされていました。
例えば、ガソリン・軽油といった石油製品にかかる税金では、道路整備等の目的で「本則税率」に追加で乗せられた税率として導入されてきました。
なぜ暫定税率が設けられたか
1970年代のオイルショックを契機に、道路網の整備促進や燃料代高騰への対応を目的として、“期間限定で燃料に上乗せ課税”する案が成立。
その後、本来の「期間限定」の枠を超えて延長され、実質的には長期間にわたって継続されてきたのが実態となっているようです。
ガソリン・軽油での実際の税率
例えば、ガソリン税(揮発油税・地方揮発油税)においては、「本則税率」に加え、1リットルあたり約25.1円の暫定税率分が上乗せされてきました。
また、軽油引取税に関しても、地方税法附則に基づき「本則」+上乗せ分(約17.1円/1リットル)という形で設定されていました。
なぜ「暫定」なのに長期化しているのか
期限付きであった“暫定税率”は、法改正による延長が繰り返され、結果的に“恒久化”に近づいたという経緯があります。
そのため、今回のように「廃止する」というニュースが大きな意味をもって受け止められているわけです。
今回の合意内容(2025年11月5日実務者協議)
読者の皆さまが押さえておきたいポイントを整理します。
ゼロ:ガソリン(1リットルあたり25.1円)と軽油引取税(同17.1円)の暫定税率を段階的に廃止することで、与野党6党(自民党、日本維新の会、立憲民主党、国民民主党、公明党、日本共産党)で正式合意。
ガソリン:2025年12月31日に暫定税率を廃止。実施に向けて移行措置として補助金を段階的に増額。具体的には11月13日から2週間ごとに1Lあたり同5円ずつ補助を増やし、12月11日には暫定税率分まで引き上げ。12月31日で税率そのものを廃止。
軽油引取税:ガソリンと同様に補助金を段階的引き上げ。11月27日時点で暫定税率分と同水準の補助金に引き上げた後、自治体の財政年度スタートである来年4月1日に暫定税率を廃止。
廃止分の安定財源について:法人税関係の租税特別措置見直し、極めて高い所得者への課税見直しなどを検討し、今年末までに結論を得る方針。
法改正が必要:ガソリンの暫定税率の廃止は、野党提出の「暫定税率廃止法案」を修正して、今の国会で成立させる見込み。
ここからの焦点:どの租税特別措置が見直されるか、合計所得が約30億円を超える人への追加負担がどこまで拡大されるか。
このように、単純な「税率を下げます」という話ではなく、「段階的な補助金+廃止+財源確保のための制度設計」という三段構えの動きのようです。
個人的には高所得者層をいじめるほど高所得者層が海外移住してしまうリスクがあるのでは?と思ってしまいます。
小規模法人・個人事業主にとっての影響とポイント
東京都中央区で事業を営まれている皆さまにとって、今回の制度変更は以下のような観点から関係があります。
暫定税率廃止によるプラスの側面
ガソリンを事業用車両等に使用している場合、燃料価格の下落が期待できます。12月末に暫定税率が廃止されれば、1リットルあたり約25円+消費税分(約2.5円)=約27円強の軽減見込み。
燃料コストが下がれば、物流費・営業車維持費・配送コストなどが抑えられ、結果として販管費の低減につながる可能性があります。
暫定税率廃止による注意すべき側面
補助金方式による「移行期間」が設けられるため、11月中は補助金額が段階的に増加するものの、実質的な税率変化までは時間があります。混乱を避けるため、車両維持計画や発注スケジュールを確認しておくと安心です。
税率廃止に伴い、代替財源のために法人税の租税特別措置や「極めて高い所得」者の課税が見直される可能性があるという点。事業規模が大きめの法人や、個人所得が高い個人事業主は、今後の負担増リスクを注視しておく必要があります。
道路インフラ整備や自治体財政の観点から、他の税・負担が増える可能性も指摘されています。
事業者にとっての実務的な対応のヒント
燃料費・車両維持費の予算を改めて確認し、12月以降のコスト減少を試算しておく。
車両の使用量・走行距離を把握し、燃料価格変動でどれだけコストが変わるかをシミュレーション。
今回の廃止と財源確保策(法人税関係・所得課税)を受けて、法人・個人の税務戦略も見直しを検討。特に今年末までに結論が得られる財源確保策を注視。
補助金の移行スケジュールを事業活動カレンダーに入れておく。たとえば、11月13日・11月27日・12月11日と段階的に補助金が増加することを踏まえて燃料調達・在庫管理に反映。
例えば東京都中央区で営業されているなら、交通・配送ルート・燃料使用量を改めて見直すなど“地元特有の物流条件”も加味しておく。
よくある質問
Q1. 暫定税率が廃止されると本当にガソリン価格が下がる?
A.はい、下がります。
ただし廃止は12月末(ガソリン)あるいは来年4月(軽油)とスケジュールがあるため、段階的な補助金を経て価格が下がるという流れです。補助金が増えることで実質価格が抑えられ、最終的に暫定税率そのものがなくなります。
Q2. 「補助金」とはどういうこと?
A.政府が石油元売り等に対して「●円/L分」補助をする制度です。
今回、ガソリンでは現行約10円/Lの補助が、11月13日から2週間ごとに5円ずつ増額され、12月11日には暫定税率分まで引き上げられます。
Q3. 個人事業主・小規模法人にとってどこをチェックすべき?
A.燃料使用量、車両数、走行距離、配送料金や物流コスト、そして今後予想される税務・財源見直し(法人税・所得課税)など。特に燃料コスト削減とそれを活かした採算改善を図るチャンスです。
Q4. 暫定税率廃止で、他に負担が増える可能性は?
A.はい、それは大いに考えられます。
廃止に伴い、税収が減る分、他の税(例:法人税の租税特別措置の見直し、前述のように超高所得者への課税強化)が代替財源として議論されています。今後の税制改正動向も注視が必要ですね。
終わりに
今回の暫定税率廃止の合意は、東京都中央区で事業をされている皆さまにとって、燃料コスト面での「追い風」と捉えられます。ただし、廃止に至るまでには補助金移行期間があり、また税収確保のために別の税制変更がある可能性もあります。
したがって、単に「燃料が安くなる」と喜ぶだけでなく、燃料使用状況の整理・予算の見直し・税務戦略の確認という観点を併せて進めることが賢明だと考えます。
今後も皆様にプラスとなるような記事を投稿してまいります。
よろしくお願いします。




















