2025年6月に政府が発表した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(改訂版)」では、中小企業や個人事業主にとって重要な税制見直しが多数盛り込まれました。
本記事では、その中でも実務に影響が大きい5つのポイントをわかりやすく解説します。
社員への福利厚生、暗号資産への課税、事業承継など、これからの経営判断に関わるテーマばかりです。
目次
1. 食事支給・マイカー通勤手当の非課税限度額が見直しへ
物価上昇が続く中、社員に支給される「食事手当」や「通勤手当」の非課税限度額が時代に合っていないという課題があります。
現在の非課税限度額:
食事支給:月額3,500円(昭和59年から据え置き)
マイカー通勤手当:片道55km以上で月額31,600円(平成26年から据え置き)
これらは長らく見直しが行われておらず、今回の計画では**「速やかな見直し」が明言されました。
特に地方の中小企業ではマイカー通勤が主流**であり、支給方法の変更が必要になるかもしれません。
2. 暗号資産に対する課税方式が分離課税に?
暗号資産(仮想通貨)を活用する個人事業主や投資家が増える中、現行制度では総合課税が原則で、税率が高くなるケースが多くあります。
政府の改訂案では、「分離課税の導入」も含めた見直しが検討対象に。
これは経営者にとって、暗号資産を利用する上での税務戦略を再構築する必要があることを意味します。
3. イノベーションボックス税制の見直し
研究開発型の中小企業にとって注目なのが、「イノベーションボックス税制」。
特許などの知的財産から得られる利益に対する優遇措置について、対象範囲や適用条件の見直しが検討されています。
研究開発型ビジネスでは、今後の制度改正によって節税戦略が変わる可能性があります。
4. 事業承継税制も引き続き議論へ
中小企業経営者の高齢化が進む中、事業承継の停滞が経済全体の課題となっています。
今回の計画でも、事業承継税制について「継続的な見直し」が明記されており、具体的な制度変更が想定されます。
特に、親族内承継を検討している経営者は、早めの情報収集と対応準備がカギになります。
5. のれんの会計処理が変更される可能性
M&Aや会社買収時に計上される「のれん」についても、償却方法や費用区分の見直しが議論されています。
これは大企業向けの内容と思われがちですが、中小M&A市場が活発化する中で無関係ではありません。
経営者が今、準備すべきこと
これらの税制見直しは、単なる制度変更ではなく経営判断そのものに影響を及ぼす内容です。
特に注目すべき点は:
社員への手当支給方法や金額の見直し
暗号資産を活用している場合の申告方法変更
承継やM&Aを検討している経営者の戦略調整
正式な法改正に先立って、今から備えておくことでスムーズな対応が可能になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 税制改正はいつから適用されますか?
多くの改正案は、2026年4月以降の適用が見込まれています。今後の国会審議や法案成立に注目しましょう。
Q. 暗号資産の分離課税は確定事項ですか?
現時点では検討段階です。確定ではありませんが、方針としては導入に前向きな印象です。
まとめ
中小企業や個人事業主にとって、税制改正は経営に直結する重大なテーマです。
2025年の見直しポイントを早めに把握しておくことで、柔軟かつ有利な対応が可能になります。
今後の法改正動向にも注視しつつ、自社に影響がある分野については税理士など専門家に早めに相談することをおすすめします。