こんにちは。東京都中央区日本橋茅場町の税理士 高橋輝雄(@teruozeimu)です。
よくこういった話を社長から聞きます。
お金を残したいけれど税金は1円でも少なくしたいんだよね~
それは誰しもが考える事。私もできればそうしたい限りです。
しかし、そんな魔法のような事は本当に可能なのでしょうか?
決算対策の節税策はキャッシュアウトが伴う
「節税をする」と考えた時、気をつけなければならないのは、
節税をするためにはそれ以上にキャッシュを使う
ということがほどんどです。
法人税を簡単に30%だと仮定すれば、まずは100%のキャッシュを使うという事に注意が必要です。
節税前:利益 200 ▲ 経費 0 = 所得 200 × 法人税 30%=税金 60
節税後:利益 200 ▲ 経費 100 = 所得 100 × 法人税 30% = 税金 30
税金は 30減っていますが、同時にキャッシュは 100 減っている!
返戻金のない保険なんて、100万円払って経費になっても30万円節税できるだけですからね。
結局節税したら保険料と納税で結局は結構な金額を支払っている事もあります。
会社は税金のために経営しているのではない
上記の話で注意しなければならないのは、税金だけにフォーカスする事です。
つまり税金を減らそうと無駄な支出をしてしまう事は得策ではありません。
特に決算月は税金にばかり目が行ってしまう(それは私たち税理士にも責任があるかもしれませんが)ので、その事を肝に命じる必要があります。
例えばですが、税金を払うぐらいにならばと安易に従業員に対して決算賞与を出す事は翌年にも同じように決算賞与がないと社員のモチベーションが極端に下がる可能性があるので注意しましょう。
お金を払わない節税の一つ「有姿除却」
決算対策も期末が迫り、あとわずかとなった時。
キャッシュアウトはしたくないんだけど、何か良い方法はないものか?
という時には有姿除却(ゆうしじょきゃく)という方法もあります。
「有姿除却」とは、廃棄処分をしておらずまだ手元にあるが、もう捨てたも同然で今後事業に使用する可能性が絶対にないものを、現状の姿のままで除却することをと言います。
国税庁より有姿除却できる資産は下記2点を満たすものに限られます。
- その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
- 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの
今後、絶対に使用される可能性がないもの、というところがポイントになります。
過去の判例では、
「資産がもはや固定資産としての命数又は使用価値を失っていることが客観的に立証される資産であることが、有姿除却処理の認められる要件と考えられる。」とされています。
従って「絶対に使えない」的な根拠(自称は✖)を揃えるべきでしょう。
有志除却できるものの例としては、製造業では古くなった資産が眠っていたりすることがあります。
具体例としては、
使用していた機械の帳簿価額が残っているが、新しい機械を購入した。以前の機械はもう使用することはない。廃棄処分する費用を考えると、処分に踏み切れない。じゃあ、その以前の使わない(使えない)機械である固定資産を税法上の損失にしてしまおう!
というのが「有志除却」の考えです。
他にも購入はしたけど使わずに眠っている備品などもありますね。
また、有姿除却だけでなく、決算は大掃除と考えて古くなったPCなども引き取ってもらうのも手です。
モチロン、帳簿の固定資産に載っている金額(簿価)よりも買い取りしてもらった金額が大きくなってしまうと「利益」となって課税の対象になります。
それは節税にもならない本末転倒な処理ですのでご注意を!
買い取りやリサイクル業者への引取りは、明細をしっかり保管しておきましょう!
引き取りの日付にもご注意を。翌期になってしまっては節税になりませんからね。
まとめ
本日の学び
- 節税は基本的にキャッシュアウトする
- 会社経営は税金の前に大事な「本業」がある
- 有姿除却はキャッシュアウトしない
キャッシュアウトしない節税というのはほぼありません。また、節税と言われているものは結局はキャッシュアウトも加味してそれでも行うかという観点が必要になります。
あなたも魔法のようなコトバにすぐに飛びつかないように気を付けてくださいね。