こんにちは。
東京都中央区日本橋茅場町の税理士、高橋輝雄です。
年末調整や確定申告の時期になると、次のような疑問を持つ方がいらっしゃいます。
「寡婦控除、寡夫控除、ひとり親控除は何が違うの?」
以前の所得税では、配偶者と死別・離婚した方に対する控除として、女性には「寡婦控除」、男性には「寡夫控除」という制度がありました。
さらに、旧制度では女性だけに「特別の寡婦」という区分があり、男性には同じような「特別の寡夫」という区分がありませんでした。
そのため、以前は「寡婦控除と寡夫控除には男女差があるのではないか」という見方もありました。
しかし、現在は制度が変わっています。
令和2年分以後は、寡夫控除は「ひとり親控除」に変わりました。
この記事では、現在の制度に合わせて、寡婦控除・寡夫控除・ひとり親控除の違い、現在も残っている寡婦控除の要件、年末調整や確定申告で注意したい点を整理します。
この記事で分かること
- 寡婦控除・寡夫控除・ひとり親控除の違い
- 令和2年分以後に制度がどう変わったか
- 現在の寡婦控除の対象者と控除額
- ひとり親控除の対象者と控除額
- 年末調整・確定申告で確認したいポイント
まず結論:現在は「寡夫控除」はひとり親控除に変わっている
現在の制度でまず押さえておきたいのは、寡夫控除は令和2年分からひとり親控除に変わっているという点です。
以前は、配偶者と死別・離婚した女性は「寡婦控除」、男性は「寡夫控除」というように、男女で制度名や要件が分かれていました。
しかし、令和2年分以後は、婚姻歴や性別にかかわらず、一定の要件を満たすひとり親については「ひとり親控除」が適用される制度になっています。
そのため、現在の記事としては、単に「寡婦控除には男女差別がある」と書くよりも、
- 旧制度では男女差があった
- 現在はひとり親控除の創設により見直されている
- ただし、寡婦控除自体は現在も残っている
という形で整理する方が正確です。
寡婦控除とは
寡婦控除とは、納税者本人が一定の要件を満たす寡婦である場合に受けられる所得控除です。
令和2年分以後の寡婦控除の控除額は、27万円です。
現在の寡婦控除は、原則として、その年の12月31日の現況で「ひとり親」に該当しない方のうち、一定の要件を満たす女性が対象になります。
主な要件は、次のように整理できます。
- 夫と離婚した後、婚姻をしていない人で、扶養親族がいること
- 夫と死別した後、婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人
- 合計所得金額が500万円以下であること
- 事実上婚姻関係と同様の事情にある人がいないこと
なお、夫と死別した場合などは、扶養親族の要件がないケースもあります。
ポイント
寡婦控除は現在も残っています。ただし、子がいるひとり親に該当する場合は、寡婦控除ではなく、ひとり親控除の対象になるかを確認します。
ひとり親控除とは
ひとり親控除とは、納税者本人が一定の要件を満たすひとり親である場合に受けられる所得控除です。
ひとり親控除の控除額は、35万円です。
ひとり親控除は、令和2年分の所得税から適用されています。
ひとり親控除の主な要件は、次のとおりです。
- 婚姻をしていないこと、または配偶者の生死が明らかでない一定の人であること
- 事実上婚姻関係と同様の事情にある人がいないこと
- 生計を一にする子がいること
- 合計所得金額が500万円以下であること
ここでいう「子」については、その子の所得要件や、他の人の扶養親族等になっていないことなども確認する必要があります。
ひとり親控除は、性別にかかわらず、要件を満たせば適用される点が大きな特徴です。
旧制度では寡婦控除と寡夫控除に違いがあった
旧制度では、女性に対する「寡婦控除」と、男性に対する「寡夫控除」が分かれていました。
さらに、女性には「特別の寡婦」という区分があり、通常の寡婦控除よりも大きい控除額が認められるケースがありました。
一方で、男性側には同じような「特別の寡夫」という区分はありませんでした。
そのため、旧制度では、配偶者と死別・離婚した後の税制上の取扱いについて、男女で差があると感じられる部分がありました。
この点は、制度が作られた時代背景の影響もあったのだと思います。
かつては「男性が働き、女性が家庭を守る」という前提で制度が設計されていた面がありました。
しかし、現在では共働き世帯も多く、ひとり親家庭の事情も多様です。
そのため、税制も時代に合わせて見直され、令和2年分以後は、子がいるひとり親について、男女を問わず「ひとり親控除」として整理されるようになりました。
現在も寡婦控除は残っている
注意したいのは、ひとり親控除が創設されたからといって、寡婦控除が完全になくなったわけではないという点です。
現在も、一定の要件を満たす寡婦については、寡婦控除を受けられる場合があります。
一方で、男性については、以前の「寡夫控除」という形ではなく、要件を満たせば「ひとり親控除」として判断することになります。
つまり、現在の制度は次のように整理できます。
| 区分 | 現在の取扱い | 控除額 |
|---|---|---|
| ひとり親控除 | 性別にかかわらず、一定の要件を満たすひとり親が対象 | 35万円 |
| 寡婦控除 | ひとり親に該当しない一定の寡婦が対象 | 27万円 |
| 寡夫控除 | 令和2年分からひとり親控除に変更 | 現在は旧制度の区分 |
年末調整・確定申告で確認したいポイント
寡婦控除やひとり親控除は、年末調整や確定申告で適用を判断することになります。
確認したいポイントは、主に次のとおりです。
- 現在婚姻しているか
- 事実上婚姻関係と同様の事情にある人がいないか
- 生計を一にする子がいるか
- 扶養親族がいるか
- 本人の合計所得金額が500万円以下か
- その子が他の人の扶養親族等になっていないか
特に、ひとり親控除は「離婚・死別」だけでなく、未婚のひとり親も対象になり得る点が、旧制度との大きな違いです。
一方で、事実婚に近い関係がある場合や、所得要件を満たさない場合などは、控除の対象外になることがあります。
年末調整で判断が難しい場合は、無理に自己判断せず、会社の担当者や税理士に確認することをおすすめします。
「寡婦控除には男女差別がある」と今も言えるのか
旧制度については、寡婦控除と寡夫控除の要件や控除額に違いがあり、男女差があると感じられる内容でした。
しかし、令和2年分以後は、子がいるひとり親については、男女を問わず「ひとり親控除」として整理されています。
その意味では、旧制度にあった大きな男女差は一定程度見直されたといえます。
ただし、現在も「寡婦控除」という女性側の制度は残っています。
たとえば、夫と死別した女性で一定の要件を満たす場合には寡婦控除の対象となりますが、同じような状況の男性については、必ずしも同じ名前・同じ制度で整理されるわけではありません。
そのため、現在の記事としては、単純に「男女差別があります」と断定するよりも、
- 旧制度では男女差があった
- 令和2年分以後、ひとり親控除により見直された
- 現在も寡婦控除は残っているため、要件確認が必要
と整理する方が正確です。
よくある質問
Q. 寡夫控除は現在もありますか?
寡夫控除は、令和2年分からひとり親控除に変わっています。現在は、男性であっても、一定の要件を満たす場合には、ひとり親控除の適用を検討します。
Q. 寡婦控除は現在も使えますか?
はい、現在も一定の要件を満たす場合には寡婦控除を受けられます。ただし、ひとり親に該当する場合は、寡婦控除ではなく、ひとり親控除の対象になるかを確認します。
Q. ひとり親控除の控除額はいくらですか?
ひとり親控除の控除額は35万円です。性別にかかわらず、一定の要件を満たすひとり親が対象になります。
Q. 年末調整で寡婦控除・ひとり親控除を間違えた場合はどうなりますか?
年末調整で控除の適用漏れや誤りがあった場合でも、確定申告で修正できることがあります。反対に、誤って控除を受けていた場合には、修正が必要になることもあります。判断が難しい場合は、早めに確認しておきましょう。
まとめ
以前の制度では、寡婦控除と寡夫控除の間に要件や控除額の違いがあり、男女差があると感じられる内容でした。
しかし、令和2年分以後は、寡夫控除がひとり親控除に変わり、子がいるひとり親については、性別にかかわらず一定の要件で控除を判断する制度になっています。
一方で、寡婦控除自体は現在も残っており、ひとり親控除とは別に要件を確認する必要があります。
現在の制度は、次のように整理すると分かりやすいです。
- ひとり親控除:性別にかかわらず、一定の要件を満たすひとり親が対象。控除額35万円
- 寡婦控除:ひとり親に該当しない一定の寡婦が対象。控除額27万円
- 寡夫控除:令和2年分からひとり親控除に変更
年末調整や確定申告では、婚姻状況、扶養親族、子の所得、本人の所得、事実婚の有無などを確認して、正しく判断することが大切です。
年末調整・確定申告の控除判断で迷った方へ
寡婦控除、ひとり親控除、扶養控除、配偶者控除などは、家族構成や所得状況によって判断が変わります。年末調整や確定申告で迷った場合は、一度整理しておくと安心です。














