年商1億円の会社に社外CFOは必要?導入タイミングを税理士が解説

年商1億円の会社に社外CFOが必要かを解説

年商1億円の会社に社外CFOは必要なのか。
会社の売上が伸びてくると、この疑問を持つ経営者の方も増えてきます。

「年商1億円くらいになったら、社外CFOを入れた方がいいのでしょうか?」

結論から申し上げると、

年商1億円になったからといって、すべての会社に社外CFOが必要になるわけではありません。

一方で、年商1億円前後は、

  • 社員が増える
  • 固定費が増える
  • 銀行借入が増える
  • 採用や設備投資が増える
  • 税金・社会保険の支払額も大きくなる
  • 社長だけでは数字を追いきれなくなる

といった変化が起きやすい時期でもあります。

つまり重要なのは、
「年商がいくらになったか」ではなく、
「経営判断を社長一人の頭の中だけで管理することが難しくなってきたか」

という点です。

この記事では、
年商1億円前後の会社が社外CFOを検討すべきタイミングと、
必要な会社・まだ必要ではない会社の違いを分かりやすく解説します。

年商1億円の会社に社外CFOは本当に必要?

まず最初にお伝えしたいのは、

売上だけで社外CFOの必要性を判断する必要はない

ということです。

同じ年商1億円でも、会社の中身はまったく違います。

例えばA社は、

  • ひとり社長
  • 固定費が少ない
  • 取引先が数社
  • 借入金がほとんどない
  • 粗利率も安定している
  • 毎月十分な現金が残る

という会社だとします。

このような会社であれば、
税理士から毎月試算表を受け取り、
社長自身が数字を理解して経営判断できているなら、
すぐに社外CFOを入れる必要性はそれほど高くありません。

一方でB社は、

  • 社員10名
  • 年商1億円
  • 複数のサービスを展開
  • 銀行借入5,000万円
  • 毎月300万円以上の固定費
  • 採用予定あり
  • 新規事業への投資予定あり

という会社だったとします。

こちらは同じ年商1億円でも、
経営判断の難易度が一気に上がります。

「社員をあと2人採用して大丈夫か」

「3,000万円を借りて新規事業へ投資していいか」

「今の売上が半年続いた場合、現預金はいくら残るのか」

「利益は出ているのに、なぜ銀行残高が増えないのか」

こうした問いに、社長は継続的に答えていかなければなりません。

この段階になると、
会計処理や税務申告だけではなく、
数字を使って未来の意思決定を支える役割

が必要になってきます。

これが、年商1億円前後の会社で
社外CFOという選択肢が出てくる理由です。

年商1億円前後で社外CFOの必要性が高まりやすい4つの理由

私は、年商1億円という数字そのものに
特別な境界線があるとは考えていません。

ただし会社がこの規模になってくると、
それまで社長一人の頭の中で管理できていたことが、
徐々に管理しきれなくなるケースがあります。

1.人件費などの固定費が増える

会社が成長すると、社員や業務委託の人数が増えていきます。

売上が増えているときは問題ありません。

しかし、人件費や家賃などの固定費は、
売上が下がったからといって簡単には減りません。

例えば月商1,000万円、固定費600万円の会社で、
売上が20%減れば月商は800万円になります。

粗利率によっては、それだけで利益が大きく減る可能性があります。

そのため会社が大きくなるほど、
「今利益が出ているか」だけではなく、
「この固定費を半年後も維持できるか」

を見る必要があります。

2.銀行借入と返済額が増える

年商1億円前後まで成長すると、
設備投資、採用、新規事業、運転資金などのために
銀行融資を利用する機会も増えてきます。

借入そのものは悪いことではありません。

むしろ私は、
会社の現預金を十分に確保するためには、
適切な借入を活用することも重要だと考えています。

ただし借入をすれば、
その後は毎月返済が発生します。

そこで見るべきなのは借入残高だけではありません。

  • 現在の現預金
  • 毎月の返済額
  • 年間の返済額
  • 営業キャッシュフロー
  • 今後の納税額
  • 今後予定している設備投資

までまとめて確認する必要があります。

借入と手元資金の考え方については、

「無借金経営は本当に安全?借入をしない会社が抱える意外なリスク」

でも詳しく解説しています。

3.採用・投資の判断金額が大きくなる

会社が小さいうちは、
数万円、数十万円の意思決定が中心です。

しかし成長すると、

  • 社員を採用する
  • オフィスを移転する
  • 広告費を増やす
  • 新しいシステムを導入する
  • 新規事業へ投資する

といった、
年間数百万円から数千万円単位の判断が増えてきます。

このとき、
「利益が出ているから大丈夫だろう」
だけで判断するのは危険です。

投資後に、

  • 現預金はいくら残るか
  • 固定費はいくら増えるか
  • 何か月で投資を回収できるか
  • 売上が計画の70%でも耐えられるか

まで確認する必要があります。

4.社長が数字を見る時間がなくなる

会社が成長すると、社長の仕事も変わります。

営業、採用、社員との面談、取引先対応、新規事業など、
数字以外の仕事がどんどん増えていきます。

その結果、

「試算表は毎月出ているけれど、ほとんど見ていない」

「銀行残高だけを見て経営している」

という状態になることがあります。

会社が成長すればするほど、
社長は経理作業から離れてもよいのですが、

数字による経営判断から離れてはいけません。

社長が毎月見るべき数字については、

「社長が毎月見るべき数字|利益・現預金・資金繰りの確認ポイント」

でも整理しています。

年商1億円で社外CFOを検討したい7つのサイン

では具体的に、
どのような状態になったら社外CFOを検討すべきなのでしょうか。

私は、年商1億円前後の会社で
次のような兆候が複数出てきたら、
社外CFOの導入を検討する一つのタイミング
だと考えています。

① 利益は出ているのに現金が増えない

損益計算書では黒字なのに、
銀行残高がなかなか増えない。

これは、

  • 売掛金
  • 在庫
  • 借入返済
  • 設備投資
  • 税金

などが影響している可能性があります。

利益と現金は同じものではありません。

詳しくは、

「利益は出ているのに現金が残らない7つの理由」

もご覧ください。

② 3~6か月先の資金繰りを把握していない

現在の銀行残高が十分でも、
3か月後に納税や賞与、大きな支払いが集中することがあります。

そのため、
現在の現預金だけではなく、未来の現預金
を見る必要があります。

まだ資金繰り表を作っていない場合は、

「中小企業が資金繰り表を毎月作るべき理由」

も参考にしてください。

③ 銀行借入が増えてきた

借入先が複数になり、
返済スケジュールも複雑になってきたら、
借入金を一覧化し、
会社全体として返済可能か確認する必要があります。

④ 採用・投資判断に迷うことが増えた

「人を採用したいけれど、本当に大丈夫か」

「この投資をしても現金は足りるか」

こういった疑問が増えてきたら、
財務を「報告」ではなく「意思決定」に使う段階
に入っています。

⑤ 社長しか会社の数字を理解していない

会社の数字がすべて社長の頭の中だけにある状態も、
成長企業では問題になりやすくなります。

会社が大きくなれば、
経営数字を一定の形で整理し、
経営会議などで共有できる状態にしていく必要があります。

⑥ 税理士との会話が税金の話だけになっている

もちろん税理士の重要な仕事は、
適正な申告と納税です。

しかし、

  • 「この採用をしても大丈夫か」
  • 「借入はいくらまでなら安全か」
  • 「来年の現金はいくら残るか」

といった問いまで相談したい場合は、
通常の税務顧問とは求める役割が変わってきます。

⑦ 社長が一人で経営判断を抱えている

私はここも重要だと考えています。

経営者には最終決定をする責任があります。

しかし、すべてを一人で考える必要はありません。

大きな投資や採用、借入を決めるときに、

「数字で見るとどうなのか」

を一緒に考える相手がいるだけでも、
判断材料は増えます。

年商1億円でも社外CFOが必要ない会社もある

ここまで読むと、
「年商1億円ならやはり社外CFOが必要なのか」
と思われるかもしれません。

しかし、必ずしもそうではありません。

例えば、

  • 事業構造が非常にシンプル
  • 社員がほとんどいない
  • 借入金が少ない
  • 十分な現預金がある
  • 粗利率が安定している
  • 大きな投資予定がない
  • 社長自身が財務に詳しい
  • 税理士との月次相談だけで十分

という会社であれば、
年商1億円を超えていても
社外CFOを導入する必要性は低いでしょう。

社外CFOを導入すること自体が目的ではありません。



経営判断に必要な財務機能がすでに社内にあるのであれば、
それで十分です。

税理士・経理・社外CFOの違い

年商1億円前後になり、
社外CFOを検討する際には、
税理士や経理担当者との役割の違いも整理しておきたいところです。

役割 主に見るもの 主な目的
経理 日々の取引 正確に数字を作る
税理士 決算・税務 適正な申告・納税
社外CFO 未来の利益・現預金・資金繰り 経営判断を支える

どれか一つが優れているという話ではありません。

会社が成長すると、
この3つの機能を分けて考える必要が出てきます。

社外CFOの具体的な業務内容や費用については、

「社外CFOの費用相場と業務範囲|中小企業は何を依頼できるのか」

で詳しく解説しています。

社外CFOの目的は「現預金最大化」

私は、社外CFOを入れる目的は、
きれいな資料を作ることではないと考えています。

資金繰り表を作ることも、
予算を作ることも、
月次レポートを作ることも、
あくまで手段です。

最終的な目的は、



会社と社長に十分な現金を残し、
経営の選択肢を増やすこと。

私はこれを「現預金最大化」と呼んでいます。

現預金が十分にあれば、

  • 人を採用する
  • 新規事業へ投資する
  • 設備を購入する
  • 広告を増やす
  • 景気悪化に耐える
  • あえて何もしない

という選択ができます。

逆に現預金が少なければ、
利益が出ていたとしても選択肢は限られます。

社外CFOの役割は、
単に数字を説明することではなく、

「この判断をしたあと、会社にどれだけ現金と選択肢が残るのか」

を社長と一緒に考えることだと思っています。

現預金最大化の考え方については、

「現預金最大化とは?会社と社長にお金を残す6つの経営戦略」

でも詳しく解説しています。

AI時代の社外CFOに求められる役割

最近では、
AIを使えば財務分析や資金繰り予測も
かなり効率化できるようになってきました。

私自身も、
今後はAIを積極的に使うべきだと考えています。

数字の集計、予実比較、レポート作成、
シミュレーションなどは、
今後さらに自動化されるでしょう。

だからこそ、
社外CFOの価値も変わっていく
と考えています。



数字を作ることではなく、
数字とAIを使って社長の意思決定を支えること。

例えばAIが、

「半年後に現金が不足する可能性があります」

と教えてくれたとしても、

  • では今借りるのか?
  • 採用を止めるのか?
  • 投資を続けるのか?
  • どの銀行に相談するのか?

最終的には経営判断が必要です。

これからの社外CFOには、
AIを使いながら、経営者と一緒に判断する能力
がより求められると考えています。

年商1億円で社外CFOを検討する前の7つのチェック項目

いきなり社外CFOと契約する必要はありません。

まずは自社について、
次の7つを確認してみてください。

  • 3~6か月先の現預金を予測できているか?
  • 借入金と返済予定を一覧で把握しているか?
  • 採用した場合の固定費増加を把握しているか?
  • 投資後の現預金をシミュレーションしているか?
  • 予算と実績の差を毎月確認しているか?
  • 社長以外に数字について相談できる人がいるか?
  • 税務以外の経営判断を数字で検討できているか?

もし、

「ほとんどできていない」

のであれば、
社外CFOを導入するかどうか以前に、
一度会社の財務状況を整理してみる価値はあります。

まとめ|年商1億円は社外CFOを考え始める一つのタイミング

年商1億円になったら、
必ず社外CFOが必要になるわけではありません。

重要なのは、
売上金額よりも会社の複雑さと経営判断の量
です。

社員が増える。
固定費が増える。
借入が増える。
投資判断が増える。

そして社長だけでは、
数字を見ながらすべての意思決定を行うことが難しくなる。



そのタイミングが、
年商1億円前後の会社が社外CFOを検討するタイミングです。

言い換えれば、



「過去の数字を正しく集計する段階」から、
「未来の数字を使って経営する段階」へ移ったとき

ともいえます。

社外CFOを導入するか迷っている場合は、
まず現在の現預金、借入金、資金繰り、固定費、投資予定などを整理してみてください。

そのうえで、
自社に足りないのが税務なのか、
経理なのか、
財務相談なのか、
それとも社外CFOなのかを考えるのがよいと思います。

社外CFOの費用も確認しておきたい方へ

社外CFOの一般的な費用感や、
どこまで依頼できるのかについては、

社外CFOの費用相場と業務範囲

で詳しく解説しています。

年商1億円前後で財務の整理が必要になってきた方へ

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高橋 輝雄
財務参謀(社外CFO) / 税理士 / 元SE。東京都中央区(茅場町)を拠点に活動 。元システムエンジニアという異色の経歴を持ち、SE出身の論理的思考と10年の税理士実務を融合させた「現預金最大化」の専門家 。 単なる過去の記録係ではなく、未来のキャッシュを創る軍師として、独自開発の『シミュレーター』と15以上の財務施策を駆使し、中小企業の資金繰りを劇的に改善 。 これまでに500件以上のマイクロ法人を支援してきた実績を持ち、情に厚く、社長の志に伴走する涙もろい財務参謀です。